クオータニオンの交換関係

では、互いに平行でない単位 I_1, I_2 の間には一体どんな関係が成り立つのだろうか? これらの関係で最も重要なのは、I_1I_2 とが交換しないという点である。従って、これらの交換関係を見るのが良いだろう。

まずは簡単な例として、クオータニオン単位同士の交換関係を考えよう。


[j, k] = jk - kj = 2i
[k, i] = ki - ik = 2j
[i, j] = ij - ji = 2k


このように、クオータニオン単位同士の交換関係は別のクオータニオン単位を生成する。ただし、2倍された値が出てくる点に注意する。

では次に、I で考えてみよう。ただし、どうせ何かを2倍した値が出てくるので、あらかじめ2分の1しておこう。


[I_1, I_2] / 2
\qquad\qquad= (I_1I_2 - I_2I_1) / 2
\qquad\qquad= [(ix_1 + jy_1 + kz_1)(ix_2 + jy_2 + kz_2) - (ix_2 + jy_2 + kz_2)(ix_1 + jy_1 + kz_1)] / 2
\qquad\qquad= [ [j, k] (y_1 z_2 - z_1 y_2) + [k, i] (z_1 x_2 - x_1 z_2) + [i, j] (x_1 y_2 - y_1 x_2) ] / 2
\qquad\qquad= (i, j, k) \cdot ({\bf r}_1 \times {\bf r}_2)
\qquad\qquad= I_{12} \sin\theta_{12}


ここで、\theta_{12}I_1I_2 の間の角度で、I_{12}I_1I_2 の両方に直交する。(向きは右手系なら I_1I_2 を右手の親指と人差し指に割り当てた際に、それらの指に直交するように中指を向けた際の方向になる。)このように、交換関係をとると2つの向きに直交な方向を向くのである。そして、その大きさは I_1I_2 のなす角が直角に近いほど大きくなる。

直交する I 同士の交換関係を考えた時が最も極端な場合で、それらに直交した I を生成する。クオータニオン単位同士の交換関係はまさにその場合であり、結局この性質は、クオータニオン単位の「クオータニオン単位同士の交換関係がそれらに直交したクオータニオン単位を生成する」という性質によって生まれるものである。

I が直交している状態から直交していない状態に変化するにつれ、両方に直交した I を生成するという性質に変化は起きないが、その大きさには影響が出てくる。これは、「平行な I 同士は交換する(II-I と交換するのは明らかだろう)」という性質と先ほどの性質との間を考えれば、イメージできると思う。


では次に反交換関係を見てみよう。まず、クオータニオン単位同士は当然反交換するので、


\{j, k\} / 2 = (jk + kj) / 2 = 0
\{k, i\} / 2 = (ki + ik) / 2 = 0
\{i, j\} / 2 = (ij + ji) / 2 = 0


となる。

では次に、I で考えてみよう。


\{I_1, I_2\} / 2
\qquad\qquad= (I_1I_2 + I_2I_1) / 2
\qquad\qquad= [(ix_1 + jy_1 + kz_1)(ix_2 + jy_2 + kz_2) + (ix_2 + jy_2 + kz_2)(ix_1 + jy_1 + kz_1)] / 2
\qquad\qquad= - (x_1 x_2 + y_1 y_2 + z_1 z_2)
\qquad\qquad= - ({\bf r}_1 \cdot {\bf r}_2)
\qquad\qquad= - \cos\theta_{12}


このように、反交換関係を取ると実数になってしまうのである。そして、その大きさは交換関係の時とは逆に、I_1I_2 のなす角が直角に近いほど小さくなる。

これも、「平行な I 同士の反交換関係は 2-2 になる(\{I, I\} = I^2 + I^2 = -2 など)」という性質と「直交する I 同士は反交換する」という性質の間を補間して考えるとイメージが湧くと思う。


これら2つの性質のうち、交換関係における性質は、クオータニオンによる回転をイメージする際に重要になってくる。これについては次回の日記に書くとする。