クオータニオンとオイラーの公式
オイラーの公式とは以下のような公式である。
特に の時
となり、無関係に作られた3つの定数 と が1つずつ現れて1つの式で繋がるという美しさから、人類の至宝であるとも言われている。( を右辺に移項して と書くこともある。)
オイラーの公式は、実のところ公式というよりは、どちらかと言うと の純虚数乗の定義である。厳密に言えば、 の純虚数乗の定義は以下のようになる。
これは、( は実数)のマクローリン展開の の部分に、単に無理矢理 を代入しただけのものである。これと と をマクローリン展開したものを比べると、直ちにオイラーの公式が導かれる。
では、 の、純虚数ではなく一般の複素数による冪 はどうなるのだろうか? これは単に
となるだけである。
ここで何となく としたが、これは と とが交換する()からこそ成り立っている点に注意する。
となるのだが(最後の和の取り方の変更は、 と が でどんな値を舐めるかを図にしてみると分かると思う)、この中で使用した
の公式が成り立つには
などが成り立つ必要があり、このためには と とが交換する必要があるのだ。このあたり、 のクオータニオン乗を考える際に注意する必要がある。
では、早速 のクオータニオン乗を考えてみよう。まず、クオータニオンは一般に
の形で表される。ここで、 を極座標で表すと、
となる。これを使うと、クオータニオンは
と書ける。ここで
と定義すると、
となる。実はこの は複素数単位と同様、二乗すると になるのである。
従って、あとは の複素数乗の場合と同様に考えると
となるわけである。これがクオータニオンを使ったオイラーの公式になる。
一般にクオータニオンは交換しないので、上で話したように
が成り立つとは限らない。( はクオータニオン。)これが成り立つのは、 の と の とが交換する場合のみである。
この はクオータニオンをイメージする上で非常に重要である。 は と に依存しており、この と はベクトル の向きを表している。 と の違いは、単に、単位となる が普通の複素数の時とは異なり、色んな方向を向く事ができるということである。ただ、もし が交換する値、すなわち が互いに平行な値だけを考えるのであれば、それは複素数を考えていることと同じことになる。クオータニオンがクオータニオンである意味を持つには、互いに平行でない を持つ値同士を考えたときだけなのである。